あやしい美容室。

その美容室は天満屋の裏、レトロな洋食屋さん「アガペ」の隣にある。
名前は「Hair Gallery（ヘアギャラリー）」。
「Hair Gallery（ヘアギャラリー）」と言えば「四角家」から歩いて20秒くらいのところに約24年、
もはや鍛冶屋町の主のように君臨していた知る人ぞ知る美容室。
当時からやっぱりあやしかった。
店の主は通称「ポール木村」。長い髪をなびかせ、古いカブにまたがって街をすり抜ける様は、
さながら浮浪者か、ジーザスクライストか。いずれにせよ只者ではないオーラを醸し出している。

ドン・タニシとのつきあいはそう古くはない。「四角家」が鍛冶屋町にオープンしてからのことである。
ただ、２５年くらい前、仕事で会ったことがありたまたまお互い覚えてたというだけのことだ。
最近、長年通っていた美容室を失いどうしょうかと思っていたドン・タニシ、
ポール先生が移転するという噂を聞き、新しい店に行ってみたのである。


看板はなく、かろうじて入り口の小さな黒板に「Hair Gallery」と書きなぐっている。

ポール　　 　「今日はどれくらいに？」
ドン・タニシ　「むさくるしいとこ全部カットしてサッパリくれたら」
ポール　　　 「ほな、この辺から？」と、後ろからノコギリを出してきて首のあたりに添える。
ドン・タニシ　「ちょ、ちょ、ちょっと先生ー。あの、フツーでええけん、フツーでお願いします」
ポール　　　 「フツー？　フツーでええん？　おもしろないなー」


ポール　　　 「えーと。ドリルはこの辺からでよろしい？」
ドン・タニシ　「あ、あほな。あの、フツーのカットでお願いします」
会話しながらスッとノコギリやドリルが出せるところがすごい。


美容室というより、工事中のアトリエといった感じ。
古い民家を買い取り、ポール木村自ら大工仕事はもちろん、電気の配線まですべて手作り。
おそろしく器用な人なのである。
ポール　　「まだ未完成。ずっと未完成だから。ガウディーのサグラダファミリア知ってる？」
不思議な人である。ずーっとしゃべっている。しかも意外と博識。
上記のようなキツイのこぎりジョークは炸裂するが、腕は確かなようで結構ファンは多い。
しかもこう見えて（どう見えるんじゃー！とポール先生のつっこみが聞こえてきそうだけど）
仕事はいたってまじめ。意外といい人なのだ。
先生の腕にホレたかセンスか、キャラかはわからないが、地元著名人？はもとより
県外からわざわざカットに来るお客さんもいるらしい。

無事カット終了。
ドン・タニシ　「あーさっぱりした。よし、首もついとるの。ほんじゃまたねー」


あやしい美容室、永遠に工事中。

Hair Gallery
住所●高松市塩上町1-3-16
電話●087-823-1363
※先生お一人なので、予約して行きましょう。