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残したいもの。 [ドン・タニシの香川るんるんグルメ日記]

ドン・タニシが前々から気になっていた店がある。喫茶「城の眼」。
城の眼 外観店名.jpg
「四角家餃子本舗」から徒歩3分くらいのところ。
相当古そうな店構え。気がついた時には既に存在していたから30年はゆうに超えているだろう。
そこから醸し出されている佇まいは、ただ古いというだけではない。
何かただならぬ存在感を発している。だいたい名前からして怪しいではないか。
「城の眼」。確かに外壁には、敵からの銃撃から身を守りながら敵を銃撃できる
小さな覗き窓のようなものがある。いわゆる城の眼だ。
となると、ここは何がしら組織の秘密基地のような店なのか。

タニシ  「フォワイエがなくなって、昼飯のローテーションがふみや明石家だけになってしもた。
       新しいところを開拓せなあかん」
キマコ  「あ。そう言えば、前から気になってた城の眼、3時までランチしてるみたいですよ」
タニシ  「お。早速行ってみようで」

城の眼 店内.jpg城の眼でドンタニシ.jpg城の眼キマコ.jpg
●奥の四角い岩のようなのがスピーカー。壁にはビュッフェの絵が。

中へ入ってみると、もっとただならなかった。
石で築いた城の石垣のような壁面、自然光が少し入る天井。石で囲まれたスピーカー。
テーブルとソファも古いけれど、気を入れて作られたものだということはすぐわかった。
ひょっとしてジョージナカシマでは。
フロアも石だ。しかもこれ大理石ではないか。
なんなんだここは。まるで美術館だ。

コーヒーは、知的な感じのする美しいマダムと、白髪のこれまた美しい大マダムが
持ってきてくれる。食事メニューも6種類ほどあり、決して今風ではないのだが、
ていねいに作られた感があり好感が持てる。
ランチついてくるフルーツにも季節感が感じられ、ちょっとうれしい。

城の眼 カレー.jpg城の眼 サンドイッチ.jpg城の眼焼そば.jpg城の眼 焼うどん.jpg城の眼中華そば.jpg城の眼焼き飯.jpg
城の眼 コーヒーと果物.jpg■城の眼LUNCHセレクション
●カレーライス●サンドイッチ●焼きそば●焼きうどん●中華そば●焼き飯
※いずれもランチタイムはフルーツとコーヒー付きで750円。
中華そばはおにぎりがついて850円。



そんなわけで、メニューはもちろん、この店の質感をいたく気に入ったドン・タニシであったが、
3度めにお店に行った時。ドン・タニシにただならぬものを感じたのか大マダムが声を掛けてきた。
大マダム 「昨日もお見えになりましたね」
タニシ   「ええ。いいお店ですね。僕、このイスが気にいって…。特注ですか?」
大マダム 「そうなんです。もう古いものでこの50年ほどの間に3回ほどシートを
       張り替えたんですよ。桜製作所さんに作っていただいたんです」
やっぱり! この目に狂いはない。ドンピシャだった。
本物のイスはこうしてファブリックを張り替えて長く使えるのだ。
朗らかな大マダム、昔のことを語り始めた。

この店ができたのは1962年。正確に言うと48年にもなる。大マダムが28歳の時であった。
設計は香川の建築界を語るに外せない山本忠司氏。直島・家プロジェクト第1弾「角屋」の修復、
イサムノグチのアトリエ修復および、庭園美術館の設計でも知られる。
室内デザインは彫刻家の空充秋氏、音楽デザインはあの武満徹とともに
アバンギャルドな音楽活動していた秋山邦晴氏。
もともとは居酒屋だった店に通っていた彼ら、新進気鋭の芸術家たちが、
自分たちのサロンを作ろうということでできたのが喫茶「城の眼」だった。
折しも1964年にはニューヨークで世界万博があり、その日本館に出品するための
実験的ワークショップのような感じで作られたらしい。
当時は夜10時頃まで営業していたが、毎晩満席状態。
現在、高松市美術館がある場所には日本銀行があり、夜は通りタクシーがずらりと
並ぶほど、当時のこのあたりはにぎやかだったとか。
復興目覚ましく、夢と希望に満ち溢れていた頃の昭和の高松。
さぞ夜毎、芸術家たちが集まり、芸術談議に花が咲いていたのだろう。
今もこうしてコーヒーや料理を笑顔で運んでくれる大マダム。
当時さぞかしかわいかっただろうと思う。
48年間、今も現役のマダムもすごいが、オープン当事とほとんど変わらず
この喫茶が存在していること自体がすごい。すべてが奇跡だ。
大マダムは「たまにお店の取材を受けることもあるんですけど、 あんまり出て真似される
と困るから…(笑)」というが、これは真似しようと思ってもできない。

城の眼 店内横.jpg

「城の眼」はやっぱり基地だったのだ。新進の芸術家たちが集まって、子供が秘密基地を作るように
楽しんで作った自分たちの基地なのだ。まだ完成されていない、けれど研ぎ澄まされたある時期の
感性で作られたものは、二度と作れない。ましてや才能のある芸術家たちが楽しんで作ったものだ。
同じように作ろうとしても絶対に真似できるものではない。

7月からいよいよ瀬戸内国際芸術祭が始まる。
島のアートをめぐるのもいいが、高松に来たら、ここはぜひ行って欲しい。
美術館以上に多くを物語ってくれるだろうから。
本物は常に永遠だ。次世代に残しておきたいものがここにある。
ドン・タニシ、スバラシイ店に出会った…(ウルルン風に)。

城の眼外観.jpg
喫茶「城の眼」
住所●高松市紺屋町2-4
電話●087-851-8447
日曜定休

瀬戸内国際芸術祭2010
会期●2010年7月19日(祝)~10月31日(日)
会場●瀬戸内海の7つの島(直島・女木島・男木島・豊島・犬島・小豆島・大島)と高松港周辺
詳しくは瀬戸内国際芸術祭のHPへ。
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本場さぬきうどんは合田照一商店
四角い餃子を注文する

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