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第3章 「海包(はいぱお)」の誕生。 [四角餃子開発物語]

かくして、オーナーが食べない「福包」ができあがった。

カフェは「オムライスがおいしい店」と噂になっていた。
なかでも某超大手企業の社長のお母様など、お友達と伊予三島市からタクシーを飛ばして
来てくださるほどのお気に入りようで、本当にありがたかった。
「銀座の有名店よりこちらのオムライスの方がおいしいわ」
お世辞もあろうが80歳を超えていつもペロッと完食していただいていた。

タニシ「餃子専門店やから3種類くらいは欲しいのぉ。海老はどや?」
キマコ「いいですね。豚に鴨に海老」
タニシ「海老と合うんはなんや? ネギか? 白菜か? 前の2つと違う野菜を使いたいのぉ」
キマコ「うーん。白ネギは鴨で使ってるし、青ネギと言うよりもう少し海老を活かしたいですね」

海老の料理も考えたけれど、もう少しシンプルに海老をアピールする餃子を作りたかった。
しかしアイデアが浮かばない。ノープランのまま、いろいろ野菜を試す。
苦悩するなか、キマコさん、持っていた中国出身の料理研究家ウーウェンさんの本を見て
今まで思いもつかなかった食材が目にとまる。
クワイ。
中国料理にちょくちょく登場するクワイは日本の煮シメに使用するものとはちょっと植物的には
違うもので独特のシャキシャキした食感を持つ。これ、いいんじゃない?
まずはみじん切りに、次にたたいて半つぶしで。さっそく試食。
食感はすごくいいんだけれど味がしっくりこない。クワイに合う味が作れない。
タニシ 「クワイ、却下。全然あかん。ほかの野菜でやってみてくれ」
その後もいろいろやってみるが、海老の入った餃子であって、海老の餃子ではない。
作りたいのは海老の海老による海老のための餃子。

そんな折、タニシ、これからのことを相談にたかちゃんに会いに尼崎に行く。
大阪の創作中国料理のお店で海老チリを食べた時だ。
タニシ   「あれ、クワイやない?」
たかちゃん「えっ! クワイわかるん?」
当時おおよそ食材の知識に明るくないタニシから「クワイ」という単語が出てくるとは
思いもよらなかったたかちゃんだった。
タニシ、尼崎から帰るなり開口一番こう言った。

タニシ 「お。大阪で見つけたぞ。海老の餃子はクワイで作ってくれ」
キマコ 「・・・・・・。えっと、クワイはこの前却下って・・・」
タニシ 「そやったっけ? 俺食べたっけ?」
キマコ 「ええ~~~~~~っ!
     この前何パターンか作ったけどクワイは却下って・・・、全然あかんて」
タニシ 「そやったかの?  とにかく決めた。大阪の店で海老チリに入っとったんや。
     あの食感はおもしろい。クワイで作りたい」

ちょっともやもやしたキマコさんだったが、海老とクワイを使った餃子のあん
というテーマでたかちゃんに丸投げする。
数日後、届いた試作のあんに半叩きにしたクワイを加えてまぜ餃子にする。
初めてそれを焼いて食べた時の感動は忘れられない。
こんな味は想像もできなかった。でもこれ以上なんの注文もないくらい完璧なあんだった。
海老のプリプリ、クワイのシャキシャキ、その2つの食感も楽しいが、海老そのものの
甘さや風味がやさしく感じられて、餃子というより蒸した点心のようなイメージ。
このやさしい味をそのままにちょっとしたアクセントにと大葉も加えた。
名前は、「珍包」「福包」に続いて
海を包むと書いて「海包(はいぱお)」

海包焼面250.jpg海包断面250.jpg

中国料理のみならずあらゆる食材や調理法を知り尽くすたかちゃんのおかげで
「四角家餃子本舗」の3つめの看板商品ができた。

餃子と同様に店で出す焼豚の開発も進んでいた。
タニシ 「ラーメンに醤油・塩・味噌があるんやったら焼豚にも醤油・塩・味噌あってもえんちゃう?」
という発送でできた「四角家」の名物の焼豚3種。
3つが味はもちろん焼きあがりの見た目にこだわったタニシ。
しおの焼豚を焼いても白っぽく仕上げるのが一番苦労したというたかちゃん。
そのしおの焼豚は後に「四角家」の92%が注文するほどの人気商品になるのである。

次回、路地裏の餃子専門店「四角家餃子本舗」開店。
タグ:海包
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四角い餃子を注文する

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